このたびの東日本大震災が、私たち巌鷲寮、佐藤・新渡戸記念寮の卒寮生の多くが生まれ育った岩手、青森など東北各県に残した大きな爪痕は、容易に癒える気配を見せません。 かけがえなき家族、慣れ親しんだ住まい、生活の糧である仕事を失い、仮設住宅や避難先で困難に直面する故郷の被災者の方々の心のうちを思うとき、 大きな哀しみを抑えることができません。
自然のもたらす恵みだけでなく、災厄をも引き受けながら生きることは、天災の多いこの国に生きる私たちの宿命であるように感じます。 ニュースで報じられる三陸の人々の、悲嘆を心のうちに秘め、唇を結び前を向く表情には、海とともに生きてきた人びとの覚悟が垣間見える気が致します。
そうした方々をなんらかの形で支えたいと、在札幌の卒寮生有志が中心となって、岩手、青森両県から道内の大学へ進学する被災世帯の子弟のための奨学金を 設けることといたしました。向学心を抱いて郷土から北海道へ渡る後輩のために寮を創設した先輩の精神に倣い、卒寮生を中心に寄付を募って奨学金の原資となる「一心奨学基金」を造成し、奨学生を募集して2012年春より給付を開始することと致しました。「一心」の名称は、寮のOB会「一心会」に由来し、まさに心を一つにして学生たちの「学び」を支援したいと願っています。 2012、13年度とも岩手県沿岸部から道内の国公立大学へ進んだ学生各1人を奨学生に選び、給付を行っています。将来の目標をはっきりと持って津軽海峡を渡り、日々の学習に、課外活動に、強い情熱をもって取り組んでいる学生たちを陰ながら支えていることは、私たちにとって大きな喜びです。 2014年度にも新たに1人への給付を始めるべく、作業を進めています。 今後も基金に対しまして、さまざまな面で多くのご理解、ご協力をいただけましたら幸いです。 2013年 10月
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